アリストロキア属
アリストロキアはウマノスズクサ属(馬の鈴草属)の学名である。  ウマノスズクサの名は、その実が馬の首に提げる鈴に似ていることに由来する。  この属の植物は500 種以上もあるとされ、世界の熱帯・亜熱帯・温帯地域に広く分布しており、多種多様な花形態が見られる。  多くのものは、花びらはなく、パイプ状もしくはラッパ状の花筒は萼が変形したものである。  その筒の奥に、雄しべが雌しべに癒着した蕊柱がある。
この独特な花は、トラップフラワーと言われ、自家受粉による遺伝的な多様性の低下を避けるための巧みな受粉戦略を担っている。  人にとっては悪臭であるが、ハエの好む臭気を発しそれを筒内の蕊柱へと導き入れる。  このときその種が雌性期であれば管状部には内側に向いた無数の毛が存在しそのハエは筒の奥に閉じ込められる。  やがて柱頭部分が萎縮し雄性期になると花粉が放出されハエはこれを全身に付ける。  この頃になると頸部の毛は萎縮しハエは解放され、その後、他株の雌性期の花に入り受粉を完了する事になる。  他家受粉を優位とするための実に巧妙な戦略である。
ウマノスズクサ類は天然物としてはきわめてまれなニトロ化合物であるアリストロキア酸Iやその類縁体を含有する。  aristolochic_acid-I
  aristolochic acid I
アリストロキア酸は腎毒性を有する。  また、発がん性や変異原性も示唆されている。  実際、ウマノスズクサ属の植物を含む漢方薬での重篤な腎障害(アリストロキア腎症)の事例もある。  中国ではキダチウマノスズクサに由来する生薬を関木通と言うが、木通(日本ではアケビを指す名称)と略されることもあり、 混同せぬよう注意が必要である。  一方、ジャコウアゲハ類(ジャコウアゲハやトリバネチョウなど)はウマノスズクサ類を食草とし、 この化学防御物質アリストロキア酸を利用している。  即ち、ジャコウアゲハは幼虫期にこの毒成分を体内に蓄積し一生体内に保持して、化学防御をしている。

注)
日本薬局方で定められているモクツウの原植物はアケビ Akebia quinata (Houtt.) Decaisne 及びミツバアケビ Akebia trifoliata (Thunb.) Koidzumiのつる性の茎であり, アリストロキア酸は含有していない。